昔の映画?白黒?サイレント?つまんなさそう。ーそう思う人に一度でいいから見てほしいチャップリン映画
チャップリンといえば、ピチピチの上着にダボダボのズボン、大きな靴にステッキとシルクハット。顔にはちょび髭。その特徴的な姿のみならず、ペンギンのような動作までが、すぐに思い浮かびそうです。
彼は、数々のコメディ映画で俳優、監督、脚本、プロデューサー、作曲をつとめ、「喜劇王」とも呼ばれました。
映画の中では、ちぐはぐで、「へんてこりん」な格好をしているチャップリン。
ところが、映画製作にかけては完璧主義で、3分ほどのシーンに342回のNGを出し、1年以上かけて撮り直したというエピソードも残っています。
こうしてこだわりをもって製作された映画には、あの手塚治虫も影響を受けたとか。
とはいえ、その作品は白黒だし、音楽や効果音はあってもサイレントだしで、昔の映画という感じで、なんかとっつきにくいですよね。
ですが、その「笑い」は現在にも通じるほど、洗練されているのです。(チャップリンの動きの細かさを見て!)
というか、大爆笑です。
最近、NHKのBSでチャップリン映画をしているのを見まして、とても面白かったので、今回ご紹介しますね。
①『黄金狂時代』(1925年)
ーチャップリン映画なら、まずはこれを見よう。
金鉱を探すために、雪深い山にやってきたチャップリン。猛吹雪のために転がり込んだ山小屋には、お尋ね者の男がいた。そこにまた、新たな金鉱探しの大男が避難してきて…。
止まない吹雪のため、はじまった三人のドタバタ避難生活。飢えすぎて鶏に間違えられ食べられそうになるチャップリン。有名な靴を食べるシーンもお見事。手の動き、所作の美しさ、ナイフで靴を切り、靴ひもをフォークで巻き取る姿の華麗さは一見の価値あり。
ロマンスあり、ちょっと悲しさもありの抱腹絶倒映画。
他の映画でもそうなのですが、チャップリンが滑稽な格好をしているために、映画中の他の登場人物に、よくバカにされるんですよね。
チャップリンって子どもの頃に苦労が多く、孤児学校を渡り歩き、生きるために床屋や印刷工、新聞の売り子などの仕事をして、時にはコソ泥を働くなどしていたそうです。
この時期に、チャップリンが辛い立場で、苦労をして様々な階級の様々な人間と関わったことが、映画での人間描写にも反映されているのでしょう。
というのは、弱い立場の者に対して、人間は取り繕ったり、へりくだったりする必要が少なく、本性をあらわにしやすいものと思われるからです。
チャップリン映画での人間描写に鋭さが感じられ、各人物の特徴が凝縮されているのも、そこで描かれているのが、弱い人間(子どもの頃のチャップリン・おかしな格好をしたチャップリン)への視線や態度だからではないでしょうか。
②『街の灯』(1931年)
ー手と手が触れ合ったときにわかること。
盲目の花売り娘のために、チャップリンが奮闘する。必死にお金持ちのフリをしたり、仕事をしたりして、娘に家賃や目の治療費としてお金を工面する。
他の主な登場人物は、自殺しようとしているところを、チャップリンに助けられたお金持ちの男。酔っぱらっているときは、チャップリンを友人として丁重に扱うが、酔いが醒めた瞬間すっかり忘れて、チャップリンをさっさと追い出してしまう。そのギャップも面白い。
割のいい仕事だと、チャップリンがボクシングに挑戦するシーンも笑えます。どうやって闘うの?って、そんなのありかよ!笑
笑えるだけでなく、恋と切なさありのすばらしいロマンス映画。
(↑『街の灯』のみ、amazon prime videoにありました!)
③『殺人狂時代』(1947年)
ー戦争とは。殺人とは。
「一人の殺害は犯罪者を生み、百万の殺害は英雄を生む。」のセリフで知られる映画。政治色が強調される作品で、たしかにシリアスな場面が多いですが、意外と笑えるシーンも。
チャップリンと彼が殺そうとしている女性が、ボートに乗って釣りをするシーンも滑稽。釣り糸の先にまさかあんなものが…笑
上のセリフを含め(どうやらチャップリンのオリジナルの言葉ではないらしいが)、映画最後の方の主人公の殺人に関する言葉の数々、ヒトラーなど戦時中の映像がチラチラ映り込んだりして、戦争についても考えさせられる映画。
チャップリン映画は声に出して笑えるほど、とても面白いです。
しかし、それだけではなく、かなしさや切なさ、ユーモアや皮肉、社会風刺があるところに、見ていて魅了されました。
緊急事態宣言が解除されたとはいえ、まだ不安な状況が続きますね。
このような昨今、自宅でチャップリン映画を見て過ごすのはいかがでしょうか。今回ご紹介したのは、とくに面白い作品(特に『黄金狂時代』がおすすめ!)や考えさせられる映画なので、お子さまと一緒にも楽しめると思いますよ。
↓Amazon プライム・ビデオのリンクです。
Amazon.co.jp: プライム・ビデオ: Prime Video
2020年6月5日
akanees