オタ系アラサー女のあれこれ日記

コスメ、美容、Kindle、テレビ・映画、本、美術など好きなものについていろいろ書き連ねます。

気分ではじめる読書①〜女心をわかってほしいときに読む太宰治〜

少しずつ暑さが和らいできましたね。秋の夜長に読書はいかがですか。

akaneesの書籍紹介の第一回は、太宰治による女性を主人公とした短編です。
太宰治の著作を読んでいてよく思うことは、なんでこんなに私の、女性の気持ちがわかるのだろう、ということです。
太宰は女性から話を聞いたり取材などもして小説を書いていたのだと思いますが、こりゃモテただろうなぁと思います。
夫や彼氏、男性と話していて、「なんで私の気持ちがわからないの!」と腹が立ったときに、太宰の本を開いてみましょう。
彼の綴った言葉の数々が、きっとあなたに寄り添い、張りつめた心をほぐしてくれますよ。

ja.wikipedia.org

 

『きりぎりす』~我慢しため込んできた気持ちを夫や彼氏にぶつけてみよう

タイトルだけ見ると、おとぎ話や昔話の類かと思いきや、主人公の妻が長年の鬱憤や不満を夫に訴えながら、三行半を突きつけるお話。
このお話自体が、夫に宛てた別れの手紙という設定で、一文目からいきなり「おわかれ致します」で始まる。なんていさぎが良いのだろう。

結婚してから、だんだん夫の態度が変わってきてしまうとは、よく聞く話だが、この女性も、結婚前には想像していなかった夫の様子に不満をもち、つぎつぎと、夫の傲慢や見栄っ張りなところを指摘する。
しかし、ただ、だらだらとグチをこぼしているのではなく、彼女の批判の言葉は、「そうそう!」と共感するような不満のポイントを的確に抑えている。しかもさすが太宰、言葉のリズム感がよくて明快。読んでいるだけで、こっちまで気持ちがすっきり。
じゃあ、タイトルの「きりぎりす」ってなんのこと?それは読んでのお楽しみ。

 

グッときた言葉


「あなたは、全然、無口か、でもないと、人の言った事ばかりを口真似しているだけ」

「一体、何になったお積りなのでしょう。恥じて下さい。「こんにち在るは」なんて恐しい無智な言葉は、二度と、ふたたび、おっしゃらないで下さい。ああ、あなたは早く躓いたら、いいのだ。」

『女生徒』~身に覚えがある。この繊細で敏感で少しあぶなっかしい気持ち

特別な事件は何も起きない。ただ、少女が朝起きてから学校で過ごし、家に帰って、お風呂に入り夜寝るまでの日常的な一日と、その間彼女がふと考えたことが描き出されている。
ただ、彼女の言葉からは、感受性の豊かさと繊細さ、少女独特の危なっかしさのようなものが感じられる。
読書中、なぜ太宰はこの言葉にできない気持ちを文章化できるのだろう、と思わされてばかりだった。
そこには、ひとつひとつ、ほんのささいな物事をこんなに敏感に感じ取っていた、かつて「女生徒」だったあなた自身の言葉が綴られているに違いない。


あと、物語の最後で、一日が終わり少女が眠りにつくときの描写も、すばらしかった。眠るときのあの、独特の感覚。ここの文章を読んで、まさしく、こんな感覚だと思った。
ただ、友人に話すとこの感覚にあまり共感してもらえなかったが……あなたは、どうだろうか?

 

グッときた言葉


「朝は健康だなんて、あれは嘘。朝は灰色。いつもいつも同じ。いちばん虚無だ。」

「私たちみんなの苦しみを、ほんとに誰も知らないのだもの。いまに大人になってしまえば、私たちの苦しさ侘びしさは、可笑しなものだった、となんでもなく追憶できるようになるかも知れないのだけれど、けれども、その大人になりきるまでの、この長い厭な期間を、どうして暮していったらいいのだろう。誰も教えて呉れないのだ。」

「明日もまた、同じ日が来るのだろう。幸福は一生、来ないのだ。それは、わかっている。けれども、きっと来る、あすは来る、と信じて寝るのがいいでしょう。」

『待つ』~あなたは何かを待ち続けてはいませんか

キーワードはタイトルにもある「待つ」。この言葉から、あなたは何を思い浮かべるだろうか。
この小説は、「二十の娘」だという「私」の一人称で語られる独白文。
「私」は、人間がきらいでこわい。人に逢うのも、いやだという。だけど、毎日駅の冷たいベンチに腰かけ、胸を躍らせて何かを待ち続けている。でも何を待っているかは、「私」自身も具体的にはわからない。


「待つ」とは、何かが来るのを期待して時を過ごす、受け身でアンニュイな行為でもある。
小説を読んでいて、私、akaneesが二十の頃を思い出した。
自分から何もしないくせに、「何か」すばらしいものが迎えに着てくれるのを待っていた。
きっと誰かに見つけてほしかったのだ。

 

グッときた言葉


「生きているのか、死んでいるのか、わからぬような、白昼の夢を見ているような、なんだか頼りない気持になって、駅前の、人の往来の有様も、望遠鏡を逆に覗いたみたいに、小さく遠く思われて、世界がシンとなってしまうのです。ああ、私はいったい、何を待っているのでしょう。」

「眼の前を、ぞろぞろ人が通って行く。あれでもない、これでもない。私は買い物籠をかかえて、こまかく震えながら一心に一心に待っているのだ。私を忘れないで下さいませ。毎日、毎日、駅へお迎えに行っては、むなしく家へ帰ってくる二十の娘を笑わずに、どうか覚えて置いて下さいませ。」

 


いかがでしたか。
太宰治といえば、つい最近、小栗旬主演、沢尻エリカ宮沢りえ二階堂ふみら出演の映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』が公開されたばかりで話題ですよね。


今回紹介した3篇は、青空文庫を利用して無料で読むことができますよ。

太宰治 きりぎりす

太宰治 女生徒

太宰治 待つ

 

↓角川文庫『女生徒』(下にリンクあります)の書籍にも収録されています。

短編で、文章も柔らかいのでいのでさくっと読めますよ。

 

2019年10月2日

akanees